カリフォルニアへバナナナメクジを採りに行ってきました。
▲生息地はやや乾燥した山間の針葉樹林。空気が澄んでいてすごく気持ちいい。僕のプラシーボ器官が濃厚なフィトンチッドを感じる。
生息地だという針葉樹林を歩き回るが、なかなか見つからない。
乾燥しているから倒木の樹皮下でも潜んでるんだろう!いや、いない!
なら樹洞の奥だろう!いない!
探し回ること数十分。無事に見つかったんだけどその環境が「ああ〜、そこっすかー」というところ。
▲意外と乾いた環境でもそれなりに活動できるようだ。そのためか分泌する粘液が異様に濃い。触ると洗ってもなかなか落ちない。
それは涸れ沢の谷底。しかもそこにばかり密集している。
確かにここなら常に湿気があるよね。陸貝業界では常識なんでしょうが目から鱗でした。
涸れ沢を凝視するのはガロアムシ探しとヤエヤママダラゴキブリの幼虫探し以来。
▲今回捕まえたのは黒斑が多く黄色がくすみがちなAriolimax columbianus。なるほど、熟してハニースポットの浮きまくったバナナに似ている。バナナナメクジには他にも二種類いる。それらはもっと鮮やかで黒斑の少ないフレッシュバナナタイプ。いつかそっちも見に行きたいね。
▲大きいでしょう?長さは大型個体が身体を伸ばすと20cmほどになる。
▲素晴らしいボリューム。だいたい日本本土にいるヤマナメクジと同程度の大きさかな。(※カタツムリやナメクジなどの陸貝類は広東住血線虫などの寄生虫を宿している場合があります。素手では触らないようにしましょう。)
▲いっぱい採れた!みんな甲羅の後部に一つ黒いスポットを持ってるのがかわいいね。(※ナメクジやカタツムリは素手で触らないようにしましょう。カリフォルニアでは寄生虫の心配はほとんどないとも聞きましたが、気をつけるに越したことはないです。雑菌はいるだろうし、何よりバナナナメクジの粘液は手につくと取れない。)
▲ベビーサイズのバナナナメクジも。か、かわいい…。この透明感…。持ち帰って飼いたいくらいだが、防疫法で輸入は禁止されている。マダラコウラナメクジの例もあるしなあ。
▲バナナナメクジについてよく聞かれるのが「なぜあんなに派手な体色なの?」という点。あれ、実は保護色です。バナナナメクジが分布するのは温帯なので落葉樹があるわけですよ。となると林床にはこういう黄色い落ち葉がたくさん落ちている。ところどころが黒ずんだものもね。こんな中にバナナナメクジが佇んでいると本当に見逃しちゃいます。よくできてるわー。
ところで今回はテレビ番組の撮影も絡んでいました。例のアレです。
で、試食したわけですがこれは決して悪趣味なゲテモノ食いで終わるものではない。
というのも、バナナナメクジはかつてネイティブアメリカンによって食べられていたという記録が残っている(らしい)のだ。
なぜこれを食べるのか。どういう味なのか。彼らの食文化をトレースして何がわかるのか。知的好奇心を満たす高尚な企画…だったのですが(僕の中では)、放送ではどうなったことやら(未視聴)。
▲ネイティブアメリカンは酢で体表の粘液を落としていたということだったが…。粘液は白く泡立って凝固するばかりでなかなか落ち図、今度は皮を剥いたバナナのように。こんなにしつこい粘液を持つナメクジは初めてだった(他のナメクジやカタツムリは酒で洗えばすぐぬめりが落ちるがバナナメには通用しない)。これはおそらく乾燥へ適応した特性なのだろう。
▲加熱するとあんなに大きかったバナナナメクジが『チートス』並みに小さくなってしまった。他種のナメクジなら柿ピーサイズになってしまうだろう。
内臓を取り除いて串焼きにすると水分が抜けてみるみる縮んでしまった上、外皮しか残らず指サックを食べているかのよう。
味も陸貝特有の生臭さ(粘液に由来する)が強くさほど美味しいとは言えない。
そもそも単純なタンパク源として見れば捕獲と下ごしらえの労力にその量が見合っていない。もしかするとネイティブアメリカンたちはこのナメクジにある種の薬効を見出し、食欲を満たす以外の目的で摂取していたのかもしれない。
余談 : バナナナメクジマスクを手に入れた
その後、デイリーポータルZのウェブマスターである林雄司さんからバナナナメクジのゴムマスクをいただいた。
本当は一年以上前に送っていただいていたのだが、諸般の事情で受け取りが遅れていたのだ。
▲バナナナメクジたちは生息地である種のマスコット(キモかわ系?)として妙な人気を誇っており、意外とグッズの種類が豊富。このマスクはその中でも代表的なものらしい。
いやー、ぜひこれを装備して採集に行きたかった。
残り二種に挑む際には忘れずに持って行こう。