『水深2000mに棲む深海魚を釣る』という前々から温めていた野望を実践してきた。
1000m前後でベニアコウというのはよく聞くが、2000mというのはおそらく前代未聞。遊漁では未だ誰も挑んだことがないのではないか。
実質世界最深記録への挑戦!ということで、いつのまにかテレビやら釣り具メーカーやらを巻き込む大事になってしまったが、今思い返すと単独トライだとまあまあ無理があった企画だなと思う。
主に金銭面で…。
▲道具がさ!高いの!一級品を揃えてもらったせいもありますが、この一式で100万円超えます。中古やあり合わせの道具を集めたとしても相当な額になるはず。
▲エサはサバやイナダ、イカの切り身を使用。仕掛けについている針の数は10本もしくは20本。…20本針仕掛けは正直言ってさばくのが難しすぎました。オモリ5キロをぶら下げているとハリスを手繰るのも一苦労。
深場釣りの名手である和歌山椿 袋港の代々丸さんにお願いして水深2000m超の谷間へ。
5キロのオモリで胴突き仕掛けを沈める。が、このクラスのオモリを使うと投入時の勢いがロケットの如し。ベニアコウ用の太地ムツ針(一度刺さると絶対外れない形状)がバチバチと音を立てて飛んでいく。デンジャラスすぎる…。
船長がサポートしてくれてなかったら絶対怪我してたね。自信ある。
▲電動リールのカウンターって1999mまでしか表示されないって知ってた?メーカーの想定を超えた使い方をしております。
仕掛けを沈めて引き上げるまでに往復2時間以上。あっという間に帰港時間が迫ってくる。
一投目は空振り。ヤキモキしながら二投目。アタリなんかはまったく感じないが、30分ほど流してみてとりあえず回収。すると……?
▲出ました!水深2000m出身の魚!意外にも超元気。
魚、釣れちゃった!!
白浜の京都大学附属水族館へ持ち込んで同定を依頼したところホラアナゴ科のモトソデアナゴであることが判明。
※水族館の皆様、急なお願いに対応していただき誠にありがとうございました。
▲ホラアナゴ科らしい大きく柔軟な顎。
▲側線は明瞭で、頭部表面には感覚器らしき小胞?細室?が敷き詰められたように並ぶ。
▲触れた手や仕掛けには固まりかけた木工用ボンドのような粘液がこびりつく。かなり頑丈。ヌタウナギのヌタと同様、これを捕食者の鰓に絡めて撃退するのかもしれない。無味無臭。
モトソデアナゴ……。決して大物ではないし、新種発見!なんていうニュース性もない。けれどそんなことはどうでもいいほど素晴らしい魚!
船上は歓声にあふれ、最後はみんなで握手。そして記念すべき獲物との記念撮影。
▲名船 代々丸の濱本船長と
▲その界隈では有名な釣りバカ(ちょっと引くくらいの)池尻ディレクターと
そんなわけで世界最深への挑戦は見事に成功!
やはり深海には夢が、ロマンがある。やめられない。
次は……3000m?
※詳しくはこちらの記事を参照されたし
デイリーポータルZ : 世界最深記録?水深2000mの魚を釣る
▲まともに買うとリールだけでこれだもんなぁ…。