アミア・カルヴァを食べてみたら…イセゴイ(ターポン)にそっくりでした

フロリダでアミア・カルヴァ、英名Bowfin=ボウフィン(日本では学名である Amia calvaのカタカナ表記が日本では一般的)を釣ってきました。
アミア科の魚類といえば中生代の地層からも化石が発見されているいわゆる『古代魚』。と言っても現在ではもはやこのアミア・カルヴァの一属一種のみしか地球上に残ってはいないのですが。

▲釣り場(その辺の水路)に着いたらまずパンくずで小魚を釣ります。これはマヤンシクリッドという中南米原産の魚。いくらでも釣れます。これを刻んでエサにします。

ポイントは水草が多く茂った流れの穏やかな水路。じっと水面を見つめ、流れにたゆたう水草の藪からアミアを探します。
茂みからライギョっぽい顔がのぞいていたらそれがアミア(たまにコブラスネークヘッドもいるらしいけど)。鼻先に魚の切り身をそっと沈めると…。

▲体長60cmを超える個体もちらほら。日本の観賞魚店ではなかなかお目にかかれない立派な魚体。

びっくりするほど簡単に釣れます。釣り人は結構いるんですが、みんなバス(ブラックバス&ピーコックバス)狙いでアミアは相手にしないからストレスがかかっていないんでしょう。
無垢な子供をだまくらかすようで気がひけるほどイージーに釣れます…。しかも結構デカいのが…。
▲一見するとライギョやタライーラ(南米産の底生カラシン)に似た印象ですがどちらとも縁のない分類群にあたる魚。生息する環境というかニッチが同じなら似たような外見になる。収斂進化の見本ですね。


▲意外に歯が鋭いし顎も強い。バス持ち(下顎を素手で掴む持ち方)はしちゃダメな魚ですね。

で、そんなアミアを釣ってどうするのかというと…食べます。ずっと捕まえてみたかったし、同時にずっと食べてみたかった魚なんです。アミア。
別件の取材の最中だったのですぐにはさばけず、クーラーボックス&氷で冷やしながら保管すること一晩。ようやく宿のキッチンで捌きます。とりあえず鱗が非常に硬く、包丁でこそいでもなかなか剥がれない。しつこく包丁を打ちつけていると、だんだんと皮の内側で肉が割れているような感触が…。

これではまずい。とりあえず皮付きのまま三枚におろして、後から皮を引くことに。
▲…あれ?この肉、骨の入り方。何かに似てるような…。

おろした断面を見てびっくり!これ見たことある!この細かく長く密に走る肋骨!これイセゴイ(別名パシフィックターポン)だ!ギス(オキギス)にも似てるぞ!

▲イセゴイ。外見にアミア・カルヴァとの共通点は見出せないが…。
▲肋骨の入り方が似てる。あと小骨の多さと肉質も…。


▲こちらはギス。水深300~500mラインでよく釣れる深海魚。ボーンフィッシュなどと同じソトイワシ科に属す「古い形質を残した魚」。


▲やはりアミアやイセゴイに似て細い骨がたくさん入っている、特に肋骨。

イセゴイ、ギスといえば海産硬骨魚類の中ではかなり古い特徴(稚魚時代をレプトセファルス幼生で過ごすとかね)を持つことで知られる魚たち。言ってみれば海の古代魚。
やはりアミアも古いもの同士、似た作りになっているんだなあ〜っ!!感心。
しかし、肋骨を削ごうと包丁を入れた瞬間に気づいてしまった。骨格以外にも共通点があることを。


「あっ…。肉がグズグズに…!」

身が溶けるように崩れている。身がやわらかいとか水っぽいとかそういう話ではない。ボロボロのグズグズに『傷んでいる』のだ。
▲指で触れるとマグロのたたきみたいな感触。

死後、すさまじい勢いで身の傷みが進行する。
これはイセゴイやギスにも共通してよく見られる現象で、おそらく体内の酵素による自己消化が激しく進むことに起因しているのではないかと思います(なんとなく、そして根拠なく)。

この身がすぐにグズグズになるというのは俗に古代魚と呼ばれる魚にはありがちな特性なのかもしれません。ガーなんかもたまに料理するけどちょっと怪しい感じするし。

▲アミア・カルヴァのソテー

調理器具も調味料も、つけあわせの食材も時間すらも無い状況だったので身はすべて塩胡椒とオリーブオイルでシンプルにソテーしました。
臭みはなく、味は典型的な川魚のソレで旨味はある程度感じられます。川魚にしてはアミノ酸の味が強めかな。
グズグズになってるだけあって、食感は安物のシーチキン(クズ肉の寄せ集めみたいなやつね)のようにゆるく、ザラザラと細かい細かい筋繊維が舌にあたる感じです。
なお、余ったソテーはたっぷりの野菜とオリーブとサンドイッチにしてランチボックスへ。ツナサンドっぽくて美味かったです。

…きっと、生かしたまま宿へ持ち帰って解体し、そのまますぐに調理して食べればもっと普通の食感を保てたのだろうと思います。それだと旨味もほとんど出ないだろうけど。
しかしこれはこれで面白い発見だったので満足しています。鮮度タイムアタックは次回のアメリカ取材時にでも。
アミアの卵は擬似キャビアの原料になるとも聞くので、そちらもぜひ試してみたいものです。

▲本文と全然関係ないですが、向こうのモンスターエナジーはバリエーションが豊富ですね。PET素材の缶とかあるし。容器を集めたくなってしまいました。

※最近釣具のことでよく質問を受けますが、あまりこだわりはない方です。
ちゃんと選んでいるのは針とハリスくらいでしょうか。
今回のアミアもそうですが、大きめの餌を使用するぶっ込み釣りでは基本的にこういう日本製のサークルフックを使っています。参考までに。

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