白身魚と獣肉が一緒に楽しめる!?ナルトビエイのアクアパッツァ

毎度おなじみ読売テレビ『す・またん!』のロケでナルトビエイを捕獲してきました。

舞台は淀川河口〜大阪湾奥エリア。
大阪の遊漁船『Bottom Knock』の尾後船長協力の下、無事に捕獲成。
しかもでかいのが採れましたよ…。

もともと、チヌ(クロダイ)やキビレ(キチヌ)狙いでルアー釣りをしていると頻繁に針がひっかかってえらいことになるというナルトビエイ。

ならば。とハナから目視で確認した上で、ボラ掛け針でダイレクトに引っ掛けることに。英語で言うところのスナッギングってやつですね。

釣竿とリールという同じ道具こそ使うけれど、一般的な釣りとは一線を画すまったく別の漁法です。むしろボウフィッシングやスピアフィッシングに近いシュート系の漁にカテゴライズされるべきもの。
Bottom Knockさん、釣り船なのに無理な協力お願いしてごめんなさいね!ありがとうございました!

捕獲したのは体盤長141cmの個体。これぐらいの大きさになるとたいへんな肉厚…。竿で寄せるのも船にあげるのも一苦労です。

全長(鼻先から尾の先端まで)だと3m近かったかな…。
大阪湾奥の豊栄養な環境は大量の二枚貝(主に岸壁のイガイと砂底のアサリ)を育み、それを専食するナルトビエイの巨体も支えるのだ。

で、船上できっちり血抜き処理を施し(これ重要)久しぶりに食べました。
今回は幸いにも直後に阿佐ヶ谷ロフトでのイベントが控えていたのでこんな巨体でも確実に消費できるので安心。
自宅にハイアールのストッカー設置しといてよかった…。

▲三枚におろして軟骨を抜いたヒレ。血抜き後の捌きやすさと食べやすさに限って言えば非常に優秀。

▲ナルトビエイの頰肉。…ヒレ肉がピンク色なのに対し、こちらはまるで獣肉のように赤い。

調理法はちょっとシャレを効かせてみようと本種の捕食対象であるアサリと合わせて弱肉強食アクアパッツァに。

本来は南方系の魚であるナルトビエイですが海水温上昇とともに近年になって生息海域を広げており、有明海や瀬戸内海など各地でアサリへの大規模な食害が報告されています。
ただ餌を食ってるだけのナルトビエイからしたら「いやそんなん知らんし…。」って感じでしょうが。

▲ナルトビエイのアクアパッツァ

何より特筆すべきはやはり「一個体に肉が二種類存在している」こと。

主な可食部であるヒレの肉は生だと桜色で、加熱すると真っ白になる。
しかし、二枚貝を漁っては硬い貝殻を噛み砕き続ける咬合筋=ほほ肉は鹿肉か牛肉のように真っ赤。加熱してもやはり煮込んだ獣肉にしか見えない。

両者では食感や味も異なり、加熱したヒレ肉はふわふわと柔らかく、それでいて細かな繊維をキュッキュと歯に感じる典型的な軟骨魚類的食感。そして味は薄く、単体でシンプルな調理を施すとちょっと物足りない。今回のアサリのように旨味の強い食材と合わせるのが良いだろう。アクアパッツァは正解だったと思う。
この辺を考慮するとアカエイやツバクロエイに比べると食材としてのランクが数段落ちますね。

▲火を通すと肉の色がヒレ(写真左の白いわらじみたいな部分)とほほ肉(中央の牛肉っぽい部分)で顕著に異なってくる。

そして頰肉は…。やはり魚よりも獣肉に近い。しかもじっくり煮込んでほろほろになった鹿or牛肉。味もやはり魚肉ではない。薄味だけれど獣肉に近い。不思議な食材だ。
『海の鹿肉!』とか言って売り出せないかね?…だったら鹿肉食うか。あっちも農業被害で問題になってるし。

最後にニオイについて。
トビエイ類は数あるエイの中でも特にアンモニア臭が出やすいと言われています。

▲遊泳性の弱いアカエイなどの「底べったりタイプ」はアンモニア臭が出にくい。

これは「トビエイは遊泳性が強い=浮力調整のための血中尿素濃度が高い=死後にアンモニアが蓄積しやすい」というメカニズムに起因します。
この問題については捕獲直後にガッツリ血抜きを行うことで解決できます。

それよりも注意すべきは個体によっては肉と皮の間にドブ臭さを感じます。ゲオスミン臭というやつですね。
どうも湾奥の岸壁に着くイガイを主に食っている個体に顕著なようです。

これは人によってはアンモニア臭よりも耐え難いものですが、皮を厚めに(若干の肉を犠牲にしつつ)剥がすことでかなり軽減することができます。

ちなみに、イベントでは厚めに皮を剥いでややディープフライにして提供したところほとんどのお客さんが「臭くない。普通に美味しい。」と言ってくださいました。
…嬉しいけど、ホントは『大阪湾奥岸壁味』も味わってもらいたかったんだけどね。魚の味が環境に大きく影響されるいい例だから。

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