ウチダザリガニで作るプーパッポンカリー

今年こそは再び北海道にマス釣りに、というかイクラを作りに行くぞ!…と心に決めていたのですが、主に金欠により実現せず。
歯噛みしながら思い出だけでも味わおうと三年前に敢行した道東巡りの写真を眺めていると、懐かしい景色が。

▲道東の湖へ。赤海パンの青年が映り込むと北国なのに東南アジア感あるな。

9月頭に道東在住の友人ケンちゃんに案内してもらった湖。
目当ては北米原産のザリガニであるウチダザリガニ(シグナルザリガニ)。
思えば僕は九州、沖縄、関東で暮らしてきたのでザリガニといえばアメリカザリガニにしか縁がなかった。
冷たく透き通った水、湖底は一面石だらけ。目を凝らしても小型のハゼがチラホラ見えるだけ。こんなに綺麗で貧しい(栄養的に)水辺にザリガニなんていないだろう。

そう思いつつ水深20cmほどの浅瀬に沈んでいる石を起こしてみると、いきなりいたわ……。

いるいるいる。わんさかいる。
しかもアメリカザリガニに比べて格段に動きが鈍く、手づかみでホイホイ採れてしまう。ただ、想像していたよりもサイズが小さい。

▲やっとこ見つけた立派な個体もアメリカザリガニサイズ。


▲腹側から見るとハサミが鮮やかな赤色。シグナルザリガニたる所以か。

大型個体ではアメリカザリガニを凌ぐほどの巨体を誇るというウチダザリガニだが、この日観察した浅瀬ではそこまで大きなものは見られず。アメザリサイズがせいぜい。大型はみんな深場へ落ちていたんですかね?

▲アメリカザリガニばかりを見慣れているとなかなか新鮮なビジュアルと生息環境。尾扇を丸めがちで動作もけっこう差がある。


▲色彩変異に富むようで、青い個体もちらほら。


▲赤個体と青個体の比較

ここへ来てケンちゃんがゴーグルを装備して潜り始めた。サイズは二の次として、とにかく潜水で数を稼ぐ作戦に移行したようだ。鬼気迫る表情で両手にザリを摘んでいくケンちゃん。こっわ。

▲頑張るケンちゃん。

ウチダザリガニを食いたいという僕の希望をより高水準で叶えようとしてくれたのか、はたまた単に狩猟本能のスイッチが入っただけなのか。

さて、シグナルザリガニは特定外来生物に指定されているのでポイント移動のたびに獲物を絶命させるシミュレーションもしていたが、そんなものは杞憂だった。

▲大漁!あんな狭い範囲によくもまあこれだけ…

ケンちゃんの頑張りのおかげで一カ所で十分な数が集まったのだ。僕?僕は膝までしか浸からずに快適に獲れるやつだけ獲って遊んでたよ。寒いし。
あの時のケンちゃんすげえ震えてたなー。若いっていいよねー。

その後はケンちゃん宅で試食会。
実はこのときオオカミウオイクラ作りの取材の後だったのだけど、期間中ほとんどケンちゃんの部屋で寝泊まりさせてもらっていた。寝食以外にも何から何まで案内してもらってしまい本当に助かった。今思い返してもありがたい限り…。
今さらだけれど、沖縄からなにかお礼の品を送ろうと思う。

話をザリガニ食いに戻す。ウチダザリガニはレイクロブスターという名で商品化されている。ロブスターならとりあえずボイルだろうと塩茹でに。

▲ボイルドシグナルクレイフィッシュ

美味い。サイズが小さいのでちょっと食べづらいが、味はとても良い。

「フツーにエビだね」
「フツーにエビっすよね」
なんか気の利いた感想をひねり出したいところなのだが、こんなセリフしか出てこない。だってフツーにエビなんだもんよ。
強いて言うなら「超しっかり泥抜きできたアメリカザリガニ」ってとこなんだけど、ほとんどの人には伝わらないでしょこの例え。

▲茹でてもなお色彩に差異が出る。

あと、ミソも典型的なエビミソ味だろうと期待してしゃぶりついたが、残念ながらちょっと苦味が気になる。ミソの旨味を活かしたいなら茹でて吸うよりは他の料理に充てるべきか。

小ぶりなものは揚げてもみた。これなら丸ごとバリバリいけるだろうと踏んだのだ。しかし…。

▲奥歯に衝撃が!

香ばしい殻をかみしめること数回。甘いエキスが流れ出ると同時に奥歯に「ガキッ!」と違和感が。胃石だ。これの存在を忘れてた。

▲ウチダザリガニの胃石

ザリガニは脱皮に際して外骨格のカルシウムを一旦血液中に溶かし、胃の中で結石化させて保管しておくという離れ業をやってのける。たとえ殻を噛み砕けるくらいカラッと揚げても、この胃石がけっこうな確率で入っているのでやっぱり丸ごと食べるには不適なのだ。

では小物はどう食すのがよいのか。
すぐに思いつくところはスープ、ブイヤベース、ラーメン、かにこ汁などダシを取るもの。
実際、現地のレストランではレイクロブスタースープが提供されているというし、缶詰も商品化されている。

でもさ、身体動かしてお腹すいてたのよ。白い米を食べたいのよ。
というわけで、ダシを取りつつおかずになるメニューということでタイ料理の『プーパッポンカリー』を作ることに。
プーパッポンカリーはカニ(主にガザミ類orノコギリガザミ類)を卵とカレーで炒めた料理。ちょっと甘口の、日本人好みの味付けだ。…ザリガニで作るという話は当然聞いたことがないが。
いや、プーパッポンのプーは蟹のことで、エビはクンだからザリガニはクンパッポンカリーの方が正しいのかな?どうでもいいか。

ザリガニを崩しながら炒めることしばし。ちょっと見た目にはザリガニと見抜けない仕上がりに。

▲ウチダザリガニのプーパッポンカリー風

香ばしく、甘く、ご飯がよく進む。ミソのクセも卵に上手く溶け込み、ほどよく旨味が前に出ている…ような気がする。

▲こういう顔になる系の味です

本当なら今年も今頃はイクラが漬かるのを待ちながらウチダザリガニを追い回していたはずだったんだけどなぁ…。

うん、来年こそは。来年こそは…。その時はまたケンちゃんよろしく!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1 個のコメント

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です