真冬のカブトムシ採りin沖縄 (サイカブト/タイワンカブト)

もう15年も前になりますか。
沖縄の大学へ通い始めた初年に驚いたのが、冬でも暖かいこと。なんせ暖かすぎて1月や2月でも気温が高い日にはクワガタやカブトムシが成虫で活動しているくらい。

▲冬季に成虫で活動しているクワガタは主にオキナワヒラタクワガタ。オキナワノコギリクワガタは11月に入ったあたりからさすがに見かけなくなる。

ただし、カブトムシといっても本土で見られるあの二本のツノを持ったあのカブトムシとは別物。
東南アジア原産、外来種のサイカブトです。

▲夜間や早朝に灯火周りの路上を見て回ると落っこちている。ただし農地周辺限定。

沖縄には本土にもいるカブトムシの亜種にあたるオキナワカブト(カブトムシに形態はそっくりだけどちょっと小さめ)も分布しているが、生息地が限られている上に個体数も少ない。
冬に狙って観察するならサイカブトを相手にすることになります。

▲大きさはこんなもん。もちろん甲虫としては大型の部類だが、カブトムシに比べるとふた回りほど小さい。こうして見るとカブトムシやヤンバルテナガコガネって本当に規格外のサイズなんだよなぁ。

かつてはタイワンカブトという和名で扱われることが多かったのですが、最近はサイカブトの方が標準和名として定着してきているようですね。
とはいえ、沖縄では未だにタイワンカブト呼びの方が根強い、というか地元の方がわざわざサイカブトと呼称するのは聞いたことがありません。

▲カブトムシにはない背中の点刻がイカす。ここに泥が詰まると、その辺に転がっていても土くれのように見える。カモフラージュ効果があるのかも。

この虫はサトウキビなど農作物、リュウゼツランやヤシ類などの園芸作物の害虫として、沖縄県民にとっては身近な虫なのです。悪い意味でだけど。
慣れ親しんでいるが故に新しい呼び名が定着しないというのは至極当然の話です。

▲サイカブトの特徴はオスはもちろんメスにも小さなツノが生えていること。このためメスと小型のオスは区別がつきにくい。


▲大きめのオスになるとツノも立派。ただし穴を掘るのに邪魔にならないよう枝分かれはなく、スムースに後方へ湾曲する。たしかにサイっぽい印象。また、えぐれた胸部もブルドーザーのような穿孔能力(潜行能力?)の立役者。

農業害虫だけあって農地周辺に多い虫ですが、やんばるの大国林道や那覇の国際通りといった繁華街で見かけることもあります。
ダックスフントのような胴長短足体型からもわかるように木に登るのは得意でなく、もっぱら地面を徘徊するか土に潜っています。
人によってはカブトムシというよりフンコロガシに近い印象を受けるかもしれません。

▲他にはオキナワコカブトも冬に見かけることがあります。こちらは在来種ですがサイカブトよりもさらに小型でツノも短い。

とはいえ、夏と比べれば断然その数は少ないです。一番多いのは梅雨の前後かな?堆肥置き場に近い街灯周りなんかは夜になるとひっくり返ったサイカブトだらけになります。
しかし子どもたちの人気も低めで、いっぱい転がってるのに誰にも拾われない。
外来種とはいえ、カブトムシというブランドを持っていながらここまで日陰者になれるのはある意味すごいことでは。

見た目はかっこいい虫だと思うんですけどねぇ。

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