駿河湾へ深海底曳き船の見学に行ってきました。
深海性のエビ狙いでの出漁でしたが、興味深い副産物もたくさん採れます。
▲水深300m超の海底を曳く。本エビやアマエビが採れる。
▲僕は混獲される様々な副産物が目当て。これはギンザメの幼魚。
ギンザメ、キホウボウ、フウリュウウオ…。混獲される深海生物は多岐に渡ります(またあらためて紹介します)が、一番興奮したのはこいつ!と言うかこいつら!!
▲ハダカイワシとは水揚げに際して鱗がすべてはげ落ちてしまうことからついた名前(ヤケドとも呼ばれる)。しかしこの個体は鱗の代わりに妙なものを身にまとっているような…。
一見何の変哲も無いハダカイワシ…。なんですが、よくよく見ると背中というか肩のあたりに違和感があります。
ウオっ!ウオノエくっついとる!!
背の肉をえぐり、掘り下げてウオノエが寄生しています。
ウオノエというと魚の口腔内にとりつく印象が強いかもしれませんが、種によっては体表や鰓など様々な場所に寄生します。
しかしこいつは…すごい。
何がすごいって掘り下げた肉のくぼみにジャストフィットしてハダカイワシ本来のシルエットを保っているところでしょう。
遠目に見たら馴染みすぎてて気づけなかったもん。
▲この馴染みっぷり!このフィット感!
この個体がたまたまうまい具合に馴染んだ…訳ではないのでしょう。
この手の遊泳性の強い魚にとって、体に余計な凹凸が生じるのは非常に厄介なこと。
水の抵抗が大きくなって泳ぎに支障をきたします。
おそらく食事量と成長率をうまく調整しながら宿主ご自慢の流線型魚体を維持しているのでしょう。
寄生生物という生き方はすなわち宿主と一蓮托生。機動力が落ちて宿主が大型魚に捕食されてしまえば、自分もそこでゲームオーバーな訳ですから。
細やかな気配りがニクいぜ。
ところでこのウオノエ、例によってウオノエ研究者の某氏に標本として寄贈したところおそらく『カイテイギンカ』の一種であろうとの回答をいただきました。
寡聞にして知りませんでしたが、カイテイギンカはハダカイワシ類にのみ寄生するウオノエだそうです。
この手の体表性ウオノエはウオノコバンやらウオノギンカやらウオノドウカやら貨幣になぞらえたネーミングが通例のようです。忌み嫌われがちな寄生虫にしては縁起がいい感じの名付けですよね。
カイテイギンカにのみ『海底』とついているのは深海性であることの表れなのでしょう。
そういえば過去にはこんな深海性ウオノエにも遭遇しました。
深海性のアナゴであるホラアナゴ類の口腔内に寄生するホラアナゴノエ(これも寄贈先の研究者さんに和名を教えていただきました)です。
これはその後もホラアナゴを釣るたびに定期的に採集できています。
今やおそらく我が人生で一番多く目にしたウオノエでしょう。初めて見たときは「激レアなウオノエ見つけた!!」と焦ったものですが。
▲宿主であるホラアナゴが絶命すると鰓孔や口から這い出してくるんすよ…。ほとんどホラー映画。
それからつい先日も沖縄の深海魚の体表から面白いものを採集しました。
またの機会に紹介しようと思います。
昨日のお話のナンヨウキンメもですが、食べた餌の味がそのまま本人?の味に繋がるのでしたら、今回のカイテイギンカの仲間やホラアナゴノエも、塩茹でとかにして食べたら美味しそうですね。
少なくとも良い出汁が取れそうな予感。
すっごい。。。ほんと深海は面白いですね