タスマニアオオガニ(タスマニアンキングクラブ)を料理する

タカアシガニに次ぐ世界最大級のカニ、タスマニアオオガニ。
数年前に捕まえて食べる機会に恵まれたのだが、これが実に美味かった。


身もミソも旨味が強く、それでいて中身の詰まり具合、筋繊維の太さときたら異次元。


▲カニの身で一本一本の繊維がこの太さって…。規格外すぎない?

大の男が冗談で腕を挟ませたら骨をへし折られたという話も聞いたことがあったがなるほど納得。クルミも「クシャッ。」と砕きます。マジで。

で、4月にまたタスマニア島を訪れる機会があったので現地の友人に相談してスーパーの鮮魚売り場に取り寄せてもらった。
タスマニアオオガニはタスマニアやメルボルンにおける水産重要種であるが、姿のままで店頭に並ぶことはまず無い。というか、水揚げされたほぼ全ての個体が加工品となるべく中国に輸出されそうなのでオーストラリアの方々が口にする機会があるとは考えにくい。タスマニア在住の人々でも生きた姿は水族館でしか見られないのだとか。

▲日本から来たぜ!例のブツを頼むぜ!

そんなカニを仕入れるのはなかなかの難題だったらしく、スーパーへ入るなり「待ってたよ!」とやり遂げた感MAXの誇らしげな笑顔で店員に出迎えられる。

さて、いざ購入となると気になるのは値段である。事前に聞いていた話では「入手できるとしたら大きくても3~4キロ程度の個体がせいぜい。価格はキロあたり一万円程度。」とのことだった。ということはカニ一匹に四万円か…。帰国したらパスタとインスタントラーメンしか食べられなくなってしまうが、でもまぁその価値はあるな。

数日後から始まる極貧生活を頭の端に追いやりながらカニの登場を待つ。木屑を詰められた発泡スチロール箱から威風堂々と取り出されたのは、以前に捕獲した10キロ級の個体に見劣りしない超立派なキングクラブ。王の名に恥じない威風堂々っぷり。

…いやいやいやいや!威風堂々すぎない!?3~4キロって話はどうした!!お前が威風堂々なほどこっちは……!
カニを掲げた店主は「デケェだろ!」と鼻高々。いやデケェよ!まったくだよ!

しかしここで引き下がるわけにはいかない!レジへ行くぞ!

▲747オーストラリアドル……。中古の原付買えるわ。

ところが計量の結果は7.5キロ程度と意外に軽い。10キロ超えかねない外見だったが。…それでも七万円は軽く飛んだわけだがな!
だがこの『軽さ』に対して覚えた違和感は後日友人宅で解明されることになる。

その後、水産業を営む友人らの助言もあって無事に日本へ持ちこまれたタスマニアオオガニ。
これはぜひイベントで振る舞いたいところだ。というわけで所沢在住の友人夫妻宅へ「カニ食いたくない?」「食いたい」のやりとりを経て持ち込み、下処理を行う。

▲友人宅のキッチンに佇むタスキン。小脇に抱えられたカニスプーンの役に立たないだろうな感がすごい。

彼らは過去にも悪の生物ライターによってオオカミウオメンダコアブラボウズやバラムツを刺客として送り込まれており、もはやデカいカニ程度では驚いてもくれなくなってしまっていた。かわいそうに。


▲まあ過去にこんなの持ち込まれてたら今更カニくらいなんてことないよね…。

道中のホームセンターで購入した大鍋(8,980円)で茹で上げ、各パーツ。バラして中の身をほじくり出す。するとつまようじより太い筋繊維がパンパンに詰まって……アレ?スッカスカじゃん…。

▲おん?思ったより大幅に中身が少ない…。繊維も細い…。どうして?

なにこれ、がらんどうじゃん。わずかな肉も繊維が糸くずのように細く、普通のカニと変わらん。ノコギリガザミの方がまだ立派やぞ。

…どうやら漁港でのストック期間が長すぎたらしい。カニをはじめとする甲殻類というのは生きながらにして自分の身を消化吸収することができる。エサの代わりに自分の筋肉を食うわけだ。それもものすごいスピードで。

つまり活けの状態でストックしておくほどに身がやせ細っていくのである。そして厄介なのが、彼らは外骨格で覆われているがゆえに外見からではその痩せ具合が判別できないこと。観光客向けの市場で生け簀のカニは買うな!と言われるのはこのためである。

今回のキングクラブはそれの最たるもので、外面はオカダカズチカ並みなのにその実は桐谷美玲だったというわけだ。例えヘタだな。

▲うーん、2.6キロぽっちかよ〜。やっぱり身が詰まってたら10キロ超えもあり得た個体だったのだ。

結果、取り出せた可食部(筋肉とミソ)の総重量は2.6キロのみ。2.6キロで七万円…。まあ高い買い物だったが、イベントのお客さんたちは喜んでくれたからよしとしよう。

▲ほぐした身をミソと和えて…


▲カナッペにして提供。味自体は普通に美味しかったです。

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