ヨロイナマズ(カリクティス)はカニの味 ※ただしニオイが…

フロリダの水路散策中に和名で言うところのヨロイナマズの一種、Hoplosternum littoraleを見つけた。
南米原産の外来種で、もともと合衆国にいる魚ではない。ペットとして持ち込まれたものが放流されたようだ。
日本ではヨロイナマズという名前だけでなく『カリクティス』というこのグループの総称で呼ばれることも。フロリダでは『ブラウンホプロ(brown hoplo)』あるいは鳴き声にちなんで『クイクイ(kwi-kwi)』と呼ばれていた。
捕まえた直後はたしかにクイクイと鳴く。威嚇のつもりなんだろうか。

ずっと食べてみたかった魚だったのですぐ捕獲。
捕まえ方はライトで水辺を照らし、魚影を見つけたら消灯。数十センチほど上流にそっとミミズを刺した釣り針を置いておくだけ。あとは糸の端を掴むかペットボトルに結わえて待つ。もちろん釣竿を使ってもよし。照らさずに数分我慢すれば掛かります。
硬いウロコはプレコによく似ているが、全体的なシルエットはむしろコイやアオウオに近い印象。

ところでなんでこの魚を食べたかったかというと、南米を旅行していた知人から「カニそっくりな味がしてとても美味い」と聞かされていたから。甲羅があるからカニ味、ってのは安直というか話が出来すぎというか。けれど、体のつくりに何かしらの共通点があるなら味が似通っても不思議ではないのかも。

それよりそもそも魚なのにカニ味というのは興味深いじゃないですか。そんな面白い食材を南米まで行かずとも北米で入手できるとは棚ぼた。もちろん外来種の定着という事態はまったく喜べたものではないのだが。

底を食むのに適した下向きの口

というわけで2匹を宿に連れ帰って調理開始。ちなみに遊漁規則が厳しいフロリダでも本種は外来魚ということでノーリミット。気軽にキープできる。

まず下ごしらえとして内臓とエラを取り除く。よく似た体のつくりをしたプレコ類は刃を入れられる急所が少なく下処理に難儀するが、その点ヨロイナマズは気が利いている。腹側の正中線にピシッと鱗の合わせ目があるので、そこにナイフの刃を入れるとサクッと腹を開けてしまう。

ヨロイナマズというだけあって、大きく硬いウロコが甲冑のように折り重なって体表を覆う。

知人は煮込みで食べたとのことだったので、こちらもシンプルに塩茹でに。茹で汁は…うーん、泥臭いのに加えてなんか妙な臭みがある。しかもダシはほとんど出ておらず、お世辞にもおいしいとは言えない。
しかしなんだろうこの臭いは…。

煮汁にもさぞ濃厚な旨味が出るだろうと期待していたのだが


ヨロイナマズの塩茹で

茹で上がったヨロイナマズを皿にとり、鱗をスプーンで逆撫でするとバララララッ!!と気持ちよく鱗が剝げ落ちる。この辺の潔さもやはりプレコとは似て非なる。

ウロコは気持ちいいくらい簡単に剥がれる。

鎧を脱がせて露わになるのはウォーキングキャットフィッシュ類と似た黄色味がかった肉。肉質はしっとりと柔らかく、ホロホロと崩れる。
舌触りはしっとりとやわらかく、たしかにカニに似た味わいが…!
しかし、それ以前にやっぱり臭い!口に含むとよりはっきり分かる。これは完全に硫黄のニオイだ!!そういえば肉も黄色かったよな!

「焼き芋?」ってくらい肉が黄色い。まさかこの黄色の由来がまんま硫黄だったりはするまいな。


これは……おいしくないね。

「温泉宿でカニを食べていると思えば…」と自分をごまかしながら飲み込んでいくが、やはりどう贔屓目に見てもそんなイイものではない。硫黄フレーバーの存在感が強すぎる。
ただ、ポテンシャルの高さは感じる。きっと原産地の大河で採れるものは臭みもなく、カニ風味を心から楽しめるのだろう。

しかし、捕獲した水路も市街地からはある程度離れており水も肉眼で見る限りはなかなか清浄で水草もよく繁茂している。そして何より、同じ場所で捕獲した他の魚にはそうした臭いは一切なかったのに、なぜこのヨロイナマズだけ…?

同じ場所で採れたアミア・カルバなんかはこんなニオイしなかったけどなぁ。

単に他の魚よりも極端にくさみを溜め込みやすいだけなのか、はたまた他の理由があるのか。これは引き続きの調査が必要な案件だろう。

次回のフロリダ訪問時には多地点から得たサンプルを食べ比べてみることにしよう。それから、原産地で捕獲した個体を試食することと現地流の調理法を学んでくることも必須。……やっぱり南米行かなきゃなあ。

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