シロムツ、クロムツ、アカムツ ムツ三色食べくらべ (※バラムツもあるよ)

『深海』という言葉の定義は多岐にわたります。しかし、一般的には水深200m以深を指すことが多く、『深海魚』もしかり。

そうした植物プランクトンが生育できないほど太陽光が減衰しきった水塊を主な生息環境とする魚にあてられる総称です。

とするとマダイやヒラメ、アジなどいわゆる『普通の魚』が生息するのが水深0~200mであるのに対して深海魚たちは水深200~3000m以上という大きな幅を持っていることになります。

となれば、一口に深海魚と言ってもフツーの魚たちに負けないほどバリエーションに富むことは想像に難くありません。

では、深海の入り口である水深200~300mあたりのラインにいる『ギリギリ深海魚』にはどんなものがいるのか。

駿河湾で釣りをしてみたところ、こんな魚たちが顔を見せてくれました。

どれもわりと普通っぽいビジュアルです。

とりあえず美味しそう。

この日水深300mを中心とした水深で釣れたのはユメカサゴ、マサバ、アカムツ、クロムツ、シロムツ、そしてバラムツの幼魚。

サバって意外と深い場所にもいるんですよね。水深200~350mで釣れることも珍しくありません。

じゃあサバも深海魚か?と言われると、うーん…。

でもサバ以外はちゃんと容姿に深海魚らしさが出てる。

どれも共通して眼が大きいのは、光のほとんど届かない深海で餌や外敵を視認するためのもの。

赤いものが多いのは、水中では深くなるほど赤い光が減衰していくため彼らの暮らす深海では赤い≒黒いということになる。つまり深海の闇にまぎれるための保護色となるのです。バラムツやクロムツが黒っぽいのも同じく暗闇に溶け込むためでしょう。こっちはストレートにメラニン色素を増やしまくる進化。

そんなわけで深海魚は真っ黒or真っ赤なものが多いんです。

この辺りの水深で採れる魚には美味しいものが多い。この日釣れた魚たちもサバ含めてどれもたいへん優秀な食材です。
それにアカ、クロ、シロの三種のムツは市場でもけっこういい値がつきます。

▲アカムツ。近頃はノドグロと呼んだ方が通りがいいかも。

特にノドグロことアカムツは……言うまでもないけど素晴らしい味わい。脂のノリは抜群ですが、それでいてしつこくない。『上品な脂』というやつです。コクと甘さは強いけれど、スッと抜ける感じ。

『○○ムツ』と名のつく魚の中でも頭ひとつ抜けてます。

刺身で食べる際は決して皮を引いてしまわず、炙りでいただきましょう。皮と、皮の下の脂が美味いのだから。

▲クロムツ(ただのムツかも)

黒ずんだ見た目からかアカムツほどの人気はありませんが、クロムツも多くの人から好まれる魚です。買うとけっこういい値段します。

特に大型の個体ほど脂と旨みが厚くなる。

刺身でも美味いですが、僕は塩焼きが好きです。アカムツもクロムツも、あまりごちゃごちゃ手を加えないメニューが合います。

▲シロムツ。オオメハタとも。

シロムツはまた趣の異なる食味です。

ムツと名のつく魚の中では見た目も味ももっとも深海魚らしくない。

それもそのはず、生息水深も浅めで水深200mジャストあたりのラインに多く300mより深くなるとほとんど見られない(と、少ない経験上思う)。

ムツ、という名は脂の強い深場の魚に付けられることが多い名であるが、その点でシロムツはやや脂控えめ。そのためか『オオメハタ』という名で呼ばれることもある。というか市場や料理人の間ではこちらの名の方がメジャーかもしれない。

とはいえ味が薄い、旨みに欠ける、ということではなく、むしろかなり旨みはハッキリしている。

カルパッチョとか合います。良いダシが出るので僕は味噌汁のタネにすることも。

ちょっと体表の粘液が多いので、丸のまま使う場合は鱗を落とした後に水切りをかねてキッチンペーパーで拭き取ってやった方がいいかも?

いずれのムツも、気をつけるべきは間違ってもアラを捨ててしまわないこと。まだ肉ついとるわ!骨からもダシ出て美味いわ!

アラ煮にするなり、小さなものはまとめて汁にするなり大事に使いましょう。目玉もデカくて美味いから。

※バラムツも美味いけど……ダメなヤツだからオススメはしません。詳細はこちらから。

このサイズのバラムツにはなかなか遭遇できない。これはラッキー!

▲このサイズなら塩焼きがいい。決してオススメはしないけど。

なお、これらの『◯◯ムツ』たちは名前こそ似ているけれどそれぞれの分類群は割とバラバラです。
共通するのはスズキ目まで。クロムツはムツ科、アカムツとシロムツ(オオメハタ)はホタルジャコ科、バラムツはクロタチカマス科です。

◯◯鯛、みたいなもんですね。

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