先日、沖縄で行きつけの居酒屋を訪問すると「いいモン採れたからキープしといたで」とこんな魚を出された。
細い体に大きな頭。
そして口は大きく裂けており、驚いたことに開くとガバッと左右に張り出して広がる。
非常に奇妙なこの魚の名は『アゴアマダイ』。英名はジョーフィッシュ。
この大きく広がる口は砂地に巣穴を掘ったり、卵や仔魚を口内保育するのに用いられるという。
…まさか居酒屋でアゴアマダイを見ることになるとは。
この店は漁師と釣り船も兼業しており、釣った魚を店で出す。それだけなら珍しくないのだが、店主がちょっと変わり者。たまに変な魚が上がるとこうして客と試食するのだ。
このアゴアマダイは前日にジギング(メタルジグというルアーを使った釣り)で釣れたものだという。
アゴアマダイはそんなにしょっちゅう見られる魚ではない。毎日のように海に出ている店主でさえ釣ったのも食べるのも初めてのことらしい。
料理はおまかせにしたところ、半身は刺身、半身は尾と頭をつけたままアクアパッツァになって出てきた。
こんなに見栄えの悪いアクアパッツァは初めてだ。
……まぁ味は良い。意外と旨味が強くアマダイの名を冠するだけのことはある。
アクアパッツァのダシも魚体の小ささゆえにアサリに負けてしまっているが、悪くない味。
だが、やたら身離れが悪い!そもそも頭ばかりが大きく、可食部が少ない上にこの食べにくさでは評価が落ちるのも致し方なし。
そして、ほほ肉の量はまあそれなり。ほほ肉とは咬合筋、あくまで「大きく開く」顎であって「強く噛む」ための顎ではないということだろう。
次に対面するときはぜひ海の中か船の上で、生きている姿を拝みたいものだ。
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