シロスジカミキリの幼虫『鉄砲虫』はマジで美味い

今日は3月に千葉でシロスジカミキリの幼虫を採って食べた時のお話です。テレビのロケも兼ねてました。
なんか最近の投稿は一年を振り返る…みたいになりつつありますが、年末ということで。

シロスジカミキリは日本産カミキリムシの中でももっとも体長が大きくなる立派な種です。そのぶん幼虫も非常に大型で、食べ応えがあります。
カミキリムシの幼虫を食す文化は世界中に広く見られ、あのファーブルでさえその食味を絶賛したほどです。

▲フィールドは千葉県某所の果樹園。

ただ一点、採集に関して問題が…。シロスジカミキリの幼虫は主に生きたクリの木、しかも幹の内部に穿孔して暮らしているのです。
つまり、捕まえるためにはクリの木を伐採しなければならない。
ただ、シロスジカミキリに食われ続けたクリは衰弱して実りが悪くなる。そしてやがて枯れるか内部が中空になって風で折れてしまう。そのため、クリ農家の方々もある程度木が弱ると見切りをつけて伐採するといいます。…そこが狙い目。

▲さほど老いているわけでもないが、一部が枯死しているクリの木。この中にシロスジカミキリがいる。

今回はクリをたくさん植えている果樹園の方に協力していただき、枯れかけのクリを切らせてもらうことに。

▲かつて成虫が抜け出た脱出孔。何年にも渡って何匹ものカミキリムシに食われ続ける。一度に複数匹が住み着いていることもある。

シロスジカミキリが入っているであろうクリの木は割と簡単に見分けがつきます。
シロスジカミキリに目をつけられやすい木はたいてい前年以前にも侵入を許しており、かつての新成虫が外界へ出た際の脱出孔が空いています。
あるいは、焦げ茶色のおがくず状の糞が塊になって押し出されていたり。
そうしためぼしい木の中で特に状況が悪いものを果樹園の職員さんに見極めていただき、チェーンソーでぶった切ります。

▲チェーンソーで根元から切断。

倒した栗の木を根元側から少しずつ輪切りにしていき、シロスジカミキリの姿を探します。
誤って切断してしまわないよう、スライスするたびにトンネルの奥をライトで照らしながら覗き込みましょう。
姿が見えたら細い枝で引っ張り出すか、反対側も輪切りにして押し出します。

▲断面は穴だらけ。すべてシロスジカミキリの幼虫が食い荒らした後のトンネル。

こうしてようやく捕獲したのが↓の幼虫。
かなりの手間とコストがかかりますが、それにも納得のいく味です。

▲摘出された幼虫。プリプリでうまそうだ。『鉄砲虫』と呼ばれることも多い。


▲木を削り食うための顎は小さいが硬く鋭い。ニッパーしかり爪切りしかり、硬いものを切る/削る刃物というのはこういうものだ。


▲一本の木からおよそ1〜3匹が採れた。

カミキリムシの幼虫は食味の面から見てあらゆる昆虫の中でも別格の存在だと思います。
昆虫食に注目が集まりつつある昨今、各種の昆虫が次世代の食生活を担う食材としてフィーチャーされています。しかしそれらにはシンプルな調理を行なった場合、誤解を恐れずに言うなら『不味くはない』『昆虫にしては美味い』『思ったよりは食える』といった評価にとどまるものが多く見られます。もちろん粉末にして加工品にするなどの工程を踏めば別なのでしょうが…。
しかし、カミキリムシの幼虫に関しては『虫だ』という要素を抜きにしても、食材として純粋に「美味い!!」と断言できる味なのです。

▲シロスジカミキリのゴルゴンゾーラソース。この日は藤田ニコルさんの成人祝いという企画も兼ねていたので金箔をまぶして少しでもめでたく。……なってるかこれ?でも本当に濃厚で甘く、美味しい。

脂肪分が豊富でクリーミー、そしてナッツを思わせる豊かな風味もあり、トウモロコシに似た優しい甘味もある。
何度でも食べたい!と思わせる、まさに「滋味」に溢れた食材と言えます。
なんせサッと炒っただけで唸るほどの美味になる。これは真に美味い食材であることの証明でしょう(と書いた後にこの調理例だと説得力ないかもしれませんが…)。

▲シロスジカミキリのケーキ。さすがにちょっとテレビを意識して見た目で遊びすぎた感はあるが…。しかしこういう生木を食うタイプのカミキリムシはナッツのような風味が強く、クリーミー。スイーツにも合うのだ。

特にシロスジカミキリは肉づきも良く、食べ応えがあります。かと言って大味でもない。…まあ、あの美味しい栗を木ごと食らっているのだと考えれば味が良いのも道理なのかもしれませんが。
問題は入手の困難さ…。みなさん、もしいつかクリの木の伐採現場に出くわしたらぜひ幹の中をほじくりまわさせてもらえるよう頼んでみましょう。
それだけの価値はありますよ。

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